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腎不全とは?
犬も歳を取ると、腎臓病の発症が多くなります。腎臓には老廃物を尿として排出したり、体内の水分を調節したりする機能があります。腎不全になると腎臓の機能が低下することでこれらの機能に異常をきたし、全身に様々な影響を与えます。今回は老犬に多い腎不全について、症状や原因、治療法などを詳しく解説していきます。
腎臓の機能
腎臓には下記のような様々な機能があります。
・尿の生成
血液を濾過し、尿を生成することで体内の老廃物を尿として体の外に排出します。
・水分量や電解質の調節
尿の量や濃さを調節することで体内の水分量や電解質のバランスを一定に保ちます。
・血液を作る
腎臓はエリスロポエチンと呼ばれるホルモンを分泌することで、骨髄での赤血球の産生を促進します。
・カルシウムの吸収を助ける
腎臓はビタミンDを活性化することで、活性型ビタミンDを生成します。活性型ビタミンDには腸からのカルシウム吸収を促進、骨へのカルシウム沈着を増加させる、上皮小体ホルモン(骨を溶かすホルモン)の産生と分泌の抑制といった作用があります。
腎不全になると、これらの機能が阻害されてしまい、様々な症状を引き起こします。
腎不全の種類
腎不全には大きく急性腎不全と慢性腎臓病による腎不全があります。
・急性腎不全
急性腎不全は急性腎障害とも呼ばれます。腎臓の血流量や血液の濾過量が急激に減少することで、尿の量が減ったり全く出なくなったりし、それにより老廃物や水分が排出されなくなってしまいます。
・慢性腎臓病による腎不全
慢性腎臓病は老犬で特に多い腎臓の病気です。腎臓に慢性的な病変が生じることで徐々に腎機能が低下していってしまいます。数ヶ月から数年にわたって進行し、最終的には末期腎不全や尿毒症に移行していきます。
腎不全の症状
腎不全になると、次のような症状が見られるようになります。
・元気がない
・食欲がない
・脱水
・嘔吐や下痢などの消化器症状
・尿量が少ない、あるいは全く出ない
・血色が悪い
・口の中の粘膜がただれる
・口臭がひどい
腎不全の原因
急性腎不全や慢性腎臓病の原因をそれぞれ解説します。
<急性腎不全>
急性腎不全の原因は、大きく腎前性、腎性、腎後性の3つに分けられます。
・腎前性
腎臓を流れる血流が減少することで引き起こされます。具体的な要因としては、心臓病による心拍出量の減少や脱水、敗血症、外傷による出血、全身麻酔、腎毒性のある薬の投与などが考えられます。
・腎性
腎臓自体が障害されることにより発症します。腎毒性物質による中毒や腎臓の虚血、糸球体腎炎、レプトスピラ症、腎盂腎炎などの感染症などが原因として考えられます。
・腎後性
尿路が閉塞することによって引き起こされます。原因としては結石による尿路閉塞が多く、雄犬では特に注意が必要です。
<慢性腎臓病>
慢性的な腎疾患が原因で発症します。原因となる病気としては、下記のようなものが考えられます。
・先天性疾患
・免疫疾患
・腎アミロイド症
・腎盂腎炎
・尿路感染症
・慢性尿路閉塞
・腫瘍
・腎毒性物質の摂取
腎不全の診断
腎不全の診断のためには触診や視診、血液検査、尿検査、レントゲン検査、エコー検査などが必要です。
・触診、視診
触診で腎臓の腫れや脱水の有無がわかることがあります。視診により口の中の粘膜や結膜などの色から貧血気味かどうか確認します。
・血液検査
血液検査では貧血や腎機能を確認します。
貧血があると、赤血球の数やヘモグロビン量、血液中の赤血球の割合の低下が確認されます。
腎臓の機能の評価にはクレアチニンやBUN(血中尿素窒素)、リンの濃度を確認します。これらが高いと腎不全が疑われます。
・尿検査
尿検査では炎症反応の有無や尿の濃さ、結石の有無などを確認します。
尿路に炎症があると、尿蛋白や潜血が陽性になります。
尿の濃さは尿比重により確認します。尿比重が低いと尿が薄いという評価になり、腎不全が疑われます。
結石は顕微鏡検査で検出します。結石の種類によっては食事療法や薬物療法の対象となります。
・レントゲン検査
レントゲン検査では、腎臓の大きさを確認できます。腎臓が肥大していれば急性腎不全、萎縮していれば慢性腎臓病であることが多いです。
・エコー検査
エコー検査では腎臓の大きさや内部構造、結石の有無などを確認します。
腎不全の治療
腎不全の治療としては、下記のようなものが実施されます。
・点滴
点滴で水分量を確保することで、脱水の補正や腎臓の血流量の確保を行います。
・造血剤の投与
慢性腎臓病による貧血が見られる場合には、造血剤を投与します。
・消化器症状の管理
吐き気や下痢などの消化器症状が見られる場合には、吐き気止めや下痢止めを投与します。
・利尿剤の投与
尿が少ない場合やほとんどでない場合には利尿剤を投与することがあります。
・透析
透析を行うことで体内の老廃物を排出します。腹膜透析や血液透析があり、施設により実施できる内容が異なります。
腎不全の予防
腎不全はなかなか予防が難しい病気です。そのため、早期発見・早期治療が大切です。老犬になったらこまめに健康診断を行い、血液検査やレントゲン検査で腎臓の機能や構造を確認しておくといいでしょう。