夜間不眠・夜鳴きの
原因と対処法
夜間不眠・夜鳴きの原因は、様々な要因が重なりあって起こる場合が多いです。実際に認知機能不全と他の疾患や加齢性の変化は区別が難しいため、あらゆる可能性を考えながら対応していく必要があります。前回お話しした食事と同じように、昨日うまくいっても今日同じ方法ではうまくいかない場合もあります。「○○の状態のときに△△をしたら夜鳴きが止まった、よく眠ってくれた」のようなメモをつけることで愛犬の傾向と対策がみえてくると思います。日中の活動と睡眠時間も一緒にメモしておくと更に傾向がみえやすくなるでしょう。
日中の睡眠が
原因の場合の対処法
カウンセリングでまず初めに確認することは、昼間寝ている時間が長くないかということです。日中寝る時間が長ければ夜間起きがちになるのは想像しやすいと思います。高齢になると、活動量が減り他の動物や遊びに興味を示さなくなる子が多くなります。「本人が散歩に行きたがらないから」「遊びに誘ってもあまり遊んでくれないから」と寝かせていると昼夜逆転生活になってしまいます。
若いころの散歩と高齢になってからの散歩は意味合いが異なります。若いころはエネルギー発散や体力増強、社会性を身につけるために散歩が必要でした。高齢になってからは気分転換や体力の維持、筋力の維持のために散歩が必要になります。外に出てにおいを嗅いだり風を感じたり歩いて刺激を受けることは精神的にも身体的にも良い刺激になります。散歩の回数と時間を減らすと筋力が衰えて寝たきりになる危険もあります。日中の過ごしやすい時間帯に本人の様子を確認しながら無理のない程度に行ってみてください。抱っこ散歩やカートでの散歩も良い刺激になります。
その他に家の中でできることとして、おすわりやお手などの頭を使う簡単なトレーニングもおすすめです。成功したらおやつをあげたり、たくさん褒めてあげて飼い主さんも楽しみながらやってみてください。ただし、集中力は長く続かないので短時間で成功して終わらせるようにしましょう。五感の中で最後まで残る嗅覚を使ったオヤツ探しゲームもおすすめです。日中眠ったままにさせないように、できそうな事から始めてみてください。
また、朝、太陽光を浴びることで脳にある体内時計の針を進め活動状態に導くことができます。これはメラトニンというホルモンの量が関係しているのですが、メラトニンは年齢を重ねるとともに分泌量が減っていくため、加齢により朝早く目覚めたり、夜中に何度も目が覚めたりして、睡眠時間が減っていくと考えられます。そのため、朝に太陽光を浴びさせて、乱れた体内時計を戻してあげることも有効かもしれません。
次は、日中なるべく起こすようにしている場合です。
空腹やのどの渇きが
原因の場合の対処法
1つ目に考えられることはお腹が空いている場合、もしくは、のどが渇いている場合です。飼い主さんが夕食の前や夕方の散歩から帰ってすぐに犬に食事を与えている場合、夕食から朝食までの時間が長くなるため夜中に空腹で目覚めてしまうことも考えられます。その場合、飼い主さんが眠る前に少し夜食として食べさせて、空腹になりすぎないように気をつけることが大切です。
水飲み場の位置も寝床の近くに設置して、遠くに移動しなくてもすぐに飲めるように工夫してみてください。
排泄が原因の場合の対処法
2つ目はトイレに行きたくて呼んでいたり、排泄をして気持ちが悪くて呼んでいる場合です。疲れやすかったり関節炎がある犬の場合、トイレが遠かったり段差があるとひとりでトイレに行けず要求吠えをすることにつながります。
日中は自分でトイレに行けるのに夜間は失敗してしまう場合は、暗くて場所がわからない可能性があります。トイレと寝床からトイレまでの道筋にライトを付けて明るくしてあげてみてください。道筋にマットを敷いて、床材とマットの感触の違いでトイレの場所を分かりやすくしてあげるのも効果的です。
また、飼い主さんの夜間の排泄介助の負担を減らすために、夜間だけでもオムツを使用すること、寝る前に排泄を済ませておくことなどもひとつの方法です。すっきりと排泄しきれていない場合、本人のストレスにならない範囲でお尻を刺激して排便を促したり、尿がタラタラ垂れるようであればお腹を押して排尿させてみてください。
その他にも排泄障害が起きているせいで苦痛を感じ、鳴いている場合もあります。その場合はすぐに受診してください。
睡眠環境が原因の場合の対処法
3つ目は、眠る環境が整えられていない場合です。高齢になると体温の調節機能が低下するため、寒い季節の保温や暑い季節の湿気や熱中症には十分気をつけてください。
屋外で寝ている子の場合、暑さ寒さ以外にも道路の人の声、車の音、ヘッドライトの光、風、朝日などさまざまな眠りの妨げになる要因があります。
寝床が固いために体が痛くて眠れないこともあります。関節の痛みや皮膚のこすれが苦痛で鳴いている場合です。一般的なペット用ベッドや人用のバスタオルや毛布は体圧分散性が低く、腰や関節部分への負担が大きくなります。圧迫やこすれを放置していくと褥瘡*になる危険もあります。関節炎や皮膚のトラブルがある場合は、悪化する前に受診をしましょう。
褥瘡(じょくそう)*・・・寝たきりにより、身体の床に接している部分が体重で圧迫され、皮膚が傷つく、あるいはただれたり赤くなること。
当老犬ホームで使用しているユニ・チャームの介護用マットは、体圧分散性が高く通気性も良いため、褥瘡になるリスクが低くおすすめです。機能性が高い介護マットを使うことで、寝たきりになったときでも褥瘡・関節拘縮の予防や体位変換の頻度を減らす事ができ介護の負担を減らす事ができます。
夜間に目覚めてしまう理由は犬も人間も共通する部分があると思います。私たちも暑い・寒い、うるさい、トイレに行きたい、お腹がすいている、ベッドが固い、身体が痛いときなどはなかなか眠れないですよね。薬の使用を考える前にもう一度環境と生活パターンを確認してみてはいかがでしょうか。これらの改善によって夜鳴き・夜間不眠が解消されるのであれば、認知症による夜鳴きではなく要求吠えであったと考えられます。高齢だから、認知症だから、と先入観を持たずに愛犬をみてあげてください。
認知機能不全が
原因の場合の対処法
次に、認知機能不全の影響で不眠、夜鳴きをする場合です。
認知機能不全の症状には、すぐ不安になって飼い主を呼んだり、不安が増加するというものもあります。不安が強いせいで飼い主さんを呼ぶため、そばに飼い主さんがいれば鳴き止むことがあります。依存が強い子の場合は一緒の部屋で寝ることもひとつの方法です。
要求吠えの場合はその要求が解消されれば鳴きやみ、要求が通らず放置されるとエスカレートすることが多いようですが、認知症による夜鳴きは近くに人がいても気づかず鳴き続け、一旦鳴き止んでもまた同じように鳴き続けることが多いようです。